日本酒の飲み方と基礎知識
最近は日本酒のレパートリーも増えて、酒宴会も楽しくなってきました。
日本酒って? 悪酔いしそうだとか、ネガティブな印象をもっておられる方のために日本酒の飲み方や基礎知識をご紹介いたします。
◆酒米の精米歩合
日本酒の原料は水、お米、米こうじ(麹)で出来ています。日本酒のもととなるお米を「酒米」といいます。
日本酒を造る際は酒米の表面を削って使います。この酒米の削り(一般には磨きと呼びます)の程度を表したものが「精米歩合」です。
精米歩合は、酒米の状態から表面を磨き、最終的に残った部分を仕込みに使用しますが、この残った部分の割合をパーセンテージで表示したものです。例えば、精米歩合70%と表示されていれば、30%を削って残りの70%を仕込みに使用しています。
下表をご覧ください。
上表で精米歩合70%以下は酒米の磨きを30%としており、純米酒や本醸造と呼ばれます。純米酒と本醸造の違いは醸造アルコールを添加しているか、否かの違いです。
現在、酒米の最高の磨き度は99%磨き、残り1%を仕込みに使用する、究極の磨きと言われています。究極の磨きよって出来た日本酒は、ほぼ水に近づいたスッキリしたものになります。
◆酒米
日本酒作りに適した米を「酒造好適米」といい、約80品種あります。人気ブランドの代表的なものに「山田錦」、「五百万石」、「雄町」、「美山錦」、「雄山錦」などがあります。
◆日本酒の飲み方
日本酒には色んな種類や好みがあり、どんな順番に飲んだらいいのでしょうか。日本酒によって飲む順番は人それぞれで、好きなものを飲めばいいですが、初めて日本酒を口にする方に少しアドバイスしたいと思います。
私は次の順に飲むようにしています。
最初、日本酒度で言えば、-4.0 ~+1.0 程度のやや甘口またはフルーティなお酒から飲み初めます。その次に辛口のお酒、最後に酸味の効いたものという順で飲んでいます。
この飲み方は人間の体質やお酒の摂取量が増えていくことによって理にかなっています。
最初にやや甘口やフルーティなお酒を飲むのは、糖度が高いので、口当たりがよい。しかし、この甘口やフルーティなものばかり続けて飲んでいると口の中がベタベタしてきますので、次に辛口のお酒を飲むと甘辛さがはっきりし、口当たりがさっぱりとして改めて美味しく飲むことができます。辛口といっても激辛やスパイスの効いたものではなく、キリッとした口当たりになります。最後は酸味の効いたものを飲むとキレのあるスッキリした口当たりになります。
◆かならず、一緒に水を準備してください!
日本酒と一緒に飲む水のことを「和らぎ(やわらぎ)水」といいます。いわゆるウイスキーのチェイサー(追い水)のようなものです。日本酒の場合は酒を飲みながら、水を適度に挟むことで体に負担をかけずに日本酒を楽しむことができます。
できれば、日本酒を造る際に使用された「仕込み水」を飲みたいところです。日本酒に使用された水なので、上手い具合にアルコールを緩和し、酔いが回るのを防いでくれます。
◆和らぎ水の効能
・二日酔い防止
和らぎ水を飲むことで、体内のアルコールを中和させ、代謝を活発にさせることで、悪酔いを防いでくれます。
更に複数の日本酒を飲む際は合間に和らぎ水を飲むことで、口内をリセットして飲み過ぎを防いでくれます。
・脱水症状の防止
通常、お酒のアルコールを分解する際に体の水分が奪われるため、深酔いすると脱水症状を起こしやすくなりますが、和らぎ水を飲んでおくことによって、水分を予め蓄えておけるので、飲み過ぎの脱水症状を押さえるのに効果的です。
◆日本酒を飲むと頭が痛くなるのは
よく日本酒を飲むと翌朝に頭が痛くなったという経験はありませんか?
これは酒米の精米歩合に違いがあるからです。
酒米の中心部には「心白(しんぱく)」と呼ばれる部分があります。この心白に近いところまで削るほど、雑味のない香りの強いお酒になります。心白のまわりには、タンパク質や脂質などの栄養素が多くあり、雑味を生み出す原因になります。
この「雑味」が頭痛の原因となります。
酒米を磨いていくほど、雑味がだんだんと少なくなります。したがって、純米酒と純米大吟醸酒を比べると純米酒の方が、雑味を含む割合が多いので、アルコール量を多く摂取してしまうと頭が痛くなるという訳です。
◆日本酒の旨味を表す指標
日本酒の旨味を表す指標として
①日本酒度
②酸度
③アミノ酸度
以上の3つがあります。それぞれみていきましょう。
①日本酒度
日本酒の甘さや辛さを示す指標である。
一般的にマイナスになればなるほど甘口、プラスになればなるほど辛口になります。お酒の中の糖分量で甘辛度合いが決まります。
甘口の日本酒とは、日本酒度がマイナス(-)で表示されています。この日本酒度は水との比重であり、糖分を多く含んだ日本酒は水より重いため、比重がマイナスとなります。
反対に辛口の日本酒とは、日本酒度がプラス(+)で表示されています。糖分が少ない日本酒は水よりも軽いため、比重がプラスになります。
辛口といってもスパイスのような辛さではなく、口当たりがさっぱりとしたキレのあるものを辛口と言います。
②酸度
日本酒度以外に酸度があります。
酸度とは、日本酒に含まれる酸の量を表したもので、味わい、甘さ、辛さに大いに関係します。日本酒に含まれる酸は、製造の過程で原材料から発生したコハク酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸などがあります。
一般的に酸が多いと酸っぱいものと思われますが、日本酒における酸の役割はお酒のキレを生み出しており、日本酒度が同じお酒で比べると、酸度が高いと甘味が打ち消され辛くて濃く、逆に酸度が低いと甘くて淡麗に感じます。
一般的に酸度はおよそ0.5~3.0の範囲内です。
1.5より低い場合は淡麗、1.5より高いと濃醇な味わいの日本酒と言われますが、日本酒度によっても大きく感じ方が異なってきます。
③アミノ酸度
酒のコクや旨味のもとになるアミノ酸の量を相対的に表した数値です。
日本酒には、アルギニン、チロシン、セリン、ロイシン、グルタミン酸など約20種類のアミノ酸が含まれています。
一般的にアミノ酸度は1.0~2.0の範囲に収まるものがほとんどで、 アミノ酸度が小さくなると淡麗でスッキリとしたキレがあり辛口に感じます。
反対にアミノ酸度が大きくなると旨味のある芳醇で濃醇な甘みを感じるお酒になる傾向があります。
◆日本酒の製造方法
・火入れのあるなしや火入れの順序によって出来上がりの製品が異なります。
基本的に次の4つに分類されます。
① 醸造酒
・搾り→火入れ→冷蔵貯蔵(熟成)→火入れ→製品(通常の製造方法)
② 生酒(搾りたて)
・搾り→冷蔵貯蔵(熟成)→製品
③ 生貯蔵酒
・搾り→冷蔵貯蔵(熟成)→火入れ→製品
④ 生詰酒
・搾り→火入れ→冷蔵貯蔵(熟成)→製品
もう少し詳しく説明すると、次のとおりです。
・精米 → 洗米・浸漬 → 蒸米 → 放冷 → 製麹(せいぎく) → 酒母造り → 醪造り(仕込み) → 貯蔵(上層、おり引き、濾過、火入れ) → 製品
さらに図解で説明すると
◆用語の解説
日本酒は古来から伝統的に受け継がれており、専門用語や聞きなれない言葉がたくさんありますので、主な用語を解説いたします。
・淡麗とは 日本酒の口当たりがさっぱりとしていて癖がないこと。糖度と酸味の低いものをいう。一般的に「淡麗辛口」 反対は濃醇(のうじゅん)甘口
・芳醇(ほうじゅん)とは(酒)の香りが高く味のよいこと。
・濃醇(のうじゅん)とは 日本酒の味わいや口当たりが深くしっかりとしてこくがあること。糖度と酸味の高いものにいう。
・吟醸とは 精米した白米を低温でゆっくり発酵させ、粕(かす)の割合を高くし、特有な芳香(吟香)を有して醸造すること。
・麹(または糀)コウジとは 米、麦、大豆などの穀物にコウジかびなどの食品発酵に有効なカビを中心とした微生物のこと。
・酵母とは 糖分をアルコールに変える働きをする微生物のこと。酵母は、稲わらや米粒、天井、桶、壁等、色々なところに存在しています。
・山廃仕込み、単に山廃とは 生酛(きもと)系に属する製造方法で、正式名称は山卸廃止生酛。山卸とは、蒸した米、麹、水を混ぜ、粥(かゆ)状になるまで、すりつぶす工程で重労働であったのを廃止しても味が出せるようにした製造方法。
・ひやおろしとは 昔、冬に搾られた新酒が劣化しないように春先に火入れした上で大桶(おけ)に貯蔵し、ひと夏を越して外気と貯蔵桶の中が同じくらいの温度になった頃に、2回目の火入れをしないまま、大桶から樽に卸して出荷・製品とした秋の新酒として珍重されてきた。
・あらばしりとは 醪(もろみ)を酒袋に詰め、槽(ふね)の中に並べて積んでいく。この間に最初に出てくる白く濁った清酒をいう。
・火入れとは 60~65℃に加熱して殺菌する。熱湯に浸す低温殺菌である。通常は、製品として出すまでに火入れ2回を行うのが一般的である。
・無濾過とは 酒税法上の明確な定義はなく、製造者によって使われ方が異なるが、一切濾過行為をしない、不要な固形物を取り除くための粗い目のフィルター以外には濾過をしない、活性炭濾過による香味調整をしないなどの意味合いとして用いられる。
・濁(にご)り酒とは上槽 の際に粗い目の布などで濾して、意図的に滓(かす)を残したもの。火入れをしない場合は瓶内部で発酵が持続し、発泡性のものになる。
・おりがらみとは 滓下げ(おりさげ)をしないままのもの。どちらも、滓(かす)に含まれている旨み、醪独特の濃厚な香りや味わいを楽しむために造られる。「にごり酒」と表示されていても、清酒に微かな滓が漂っているものから、瓶の向こう側が見えないどぶろく状の商品まで、濁りの度合いは幅広い。
・滓下げ(おりさげ)または滓引き(おりひき)とは 上槽を終えた酒の濁りを取り除くために、待つこと。また、単に濁りをとることに留まらず、余分なたんぱく質を除去することで、瓶詰後の温度変化や経時変化によって引き起こされるたんぱく変性での濁りの予防や後工程となる濾過の負担軽減にも役立っている。
・上槽(じょうそう)とは 醪を搾り、清酒と酒粕に分ける工程で「あげふね」「ふなかけ」ともいう。一般的には圧搾機によって醪を搾るが、高級酒となると酒袋と呼ばれる布の袋に醪を入れ、圧力を加えず、重力によって布の目から自然に流れ出る清酒を時間をかけて集める手法である。
以上です。
少しでも日本酒の良さを知っていただき、美味しく飲んでいただけたら幸いです。
今後の酒宴会が楽しくなりますよ。
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