脳の上手な使い方

脳科学者で医学博士、認知科学者でもあり、TV・マスコミでも大活躍されている「中野信子さん」がご自身の経験や学業や研究などを通じて知り合った先輩、後輩、友人たちから得た上手な脳の使い方について、選りすぐりのエキスをご紹介します。

脳の特性や性質をよく理解した上で、効率的な生き方や行動を実践していきましょう。


決まった儀式やルーティンを行う



仕事や勉強の前に、集中力が高まる動作を行うというものです


勉強や仕事に取り掛かろうとしても、なかなか調子が出ないということは少なくないでしょう。そんな時は自分なりの簡単な「儀式やルーティン」を行ってから始めてみてください。この儀式やルーティンを行うことによって、脳が仕事や勉強のための準備を始めるので、自然に効率が上がります。この儀式やルーティンというのは「やりたくないな。。。」という気持ちを心から追い払うための工夫です。


「儀式やルーティン」は自分が決めたことであれば、何でも構いません


例えば、こんな感じでやるとよいでしょう。

サイフォンで美味しいコーヒーを入れる。気分によっては、濃い目の紅茶でもよい。カフェインは目を覚ましてくれるし、適度にやる気を刺激してくれる効果があります。また、ちょっと手間をかけて準備をすることも実は大事なことです。ズルズルとニュースサイトを見続けてしまったり、緊急でないメールのやりとりに時間をとられてしまうことをシャットアウトできます。気持ちもリフレッシュ出来て「さあ、やろう!」という心を整えれます


5分間だけガマンして、集中してやってみる


しかし「儀式やルーティン」を行っても、どうしてもやる気が出ない時があるかもしれません。そんな時はどんな工夫をしたらいいのでしょうか。

まず、ちょっとだけ、ガマンして5分間だけ集中してやってみることです

たった5分間だけ、ガマンして勉強や仕事を続けてみましょう。そうすると、脳は勝手に勉強モードや仕事モードに入ってくれて、そのまま30分でも1時間でも勉強や仕事を続けていくことができます

人間というのは、勉強や作業など面倒なことに対して、最初はやる気が起きないもの。それでも一度始めてしまうと、意外とすんなりと進めることができます。

つまり、勉強を始める瞬間の「やる気が起きない」気持ちを取り払うことが一番大事です。

とはいっても、それでも勉強や仕事モードに入れないこともあります。そんな時は自分でも気づかないような疲労がたまっている場合があるので、あきらめて少し横になったり、休んだりすることも大事です。


誰かのためになることをすれば、快感が得られる


脳には「社会的報酬」が得られると、ドーパミンが大量に分泌されて快感を覚え、やる気が増大するという性質があります


人間の脳は「金銭的な報酬」と同じように、社会的報酬がある場合も快感を覚えます。社会的報酬というのは、誰かから「あなたは素晴らしい!」「君のおかげで助かった!」などと褒められたり、感謝されたりすることを指します。


2011年東日本大震災時の復旧に際して、率先してボランティア活動に参画された方々がたくさんいます。バイタリティあふれる行動を起こせる方は「誰かの役に立ちたい」一心で東北地方へ飛んで行かれたと思います。

一説によれば、性的な快楽よりも「社会的報酬」による快楽のほうがずっと上だとも言われています。人間が名誉ややりがいを重要視し、時に金銭的報酬を省みずに行動してしまう傾向があるのは、脳がこのような性質を持つからです。

つまり、やり方次第で「いつまで経っても意欲的で若々しい脳」でいられるのです


人は皆、褒められたい生き物である


近年「社会脳」と呼ばれる機能が脳に備わっている、ということが話題になっています。

この社会脳というのは、その人の行動が社会性を持つように、無意識に方向付けられていく脳の仕組みのことです。人間は、金銭的報酬などと同じように、社会的報酬を求める性質があります。あなたが自分で自分のことを認める、つまり毎日褒めてあげるということは、この欲求を満たすことにほかなりません。そして、この欲求が満たされているあなたは、自分の周りにいる人のことも認めてあげられるようになります。

あなたの周りにいる人も、あなたと同じく、社会的報酬を求める「人間」という生き物ですから、自分のことを認めてくれる人の味方になろうとします。結果的に、あなたが自分のことを認めていくことで、価値ある人脈を築いていくことができるのです。


脳は休ませ過ぎると働きが悪くなる


脳というのは、大量にエネルギーを消費することもあり、ずっと戦い続けている状態に耐えられるように作られていないので、すぐに休もうとする性質を持っています


でも、あまり休み過ぎると、今度は戦えない脳になってしまいます。「うつ」を引き起こすもとにもなりかねません。休むことも大切ですが、上手に脳を戦わせてやる工夫も必要なのです。


いつも自分の夢について考えている


願いごとを叶えてくれたのは流れ星ではなく自分である


流れ星に願いごとをすると、その願いごとが叶うのはどうしてか、知っていますか?

もちろん、流れ星が願いを叶えてくれるのではありません。自分がいつもそのことを思い続けているから、願いは叶うのです。

流れ星は一瞬で流れて消えてしまいますよね。光っている時間は0.5秒くらいだそうです。何か願いごとを言おうとして、すぐに思いつかずに「えっと・・・」と考え込んでいたら、あっという間に流れ星は消えてしまいます。

でも、そこでもし、願いごとを言うことができているとしたら、それはいつも自分が「そうなったらいいなあ」と願うことができている証拠。自然と自分がそういう方向に向かっているのです。だから、流れ星に願いごとが言えた時点で気持ちは本気。夢の実現に確実に近づいているわけです。


もう一つ、実感としてわかりやすい例え話をしましょう。


砂漠にたった一本立っている看板に、なぜか頻繁に衝突事故が起こるといいます。他には何もない砂漠なのだから、避けて走ることなんて簡単にできそうですよね。それでも何台も衝突してしまうのだそうです。なぜだと思いますか?


それは、運転手がその看板を見つめ続けてしまうからなのだといいます


車を運転する人はわかると思いますが、車というのは、運転手の視線が向いている方向に進んでしまう性質があります。そのために、何もない砂漠で看板に激突してしまうということが起こってしまいます。

これは車の運転に限ったことではないのです。わたしたちの人生も同じことで、人間は自分の見ている方向にしか進んでいかないのです。もちろん、走りにくい道もあれば、障害物もあり、途切れている道もあると思います。

でも、それでもやっぱり、「その方向に行きたい!」と思っている方向に、何とかして進んでいってしまうのが人間の性質なのです


一つのことばかりすると脳はすぐに飽きてしまう


脳はすぐ、一つの刺激に対して慣れてしまい、飽きてしまうという性質を持っています


脳は苦しみを嫌い、楽しみを求める傾向を持ち、「飽きた状態」を嫌がります。ですので、飽きている状態でも同じことを続けながら「より楽しむためには、どうしたらいいかな」と思っていると、潜在意識が答えを出してくれます。そうやって、新しい楽しみを見つけた気づきは、他人からの褒め言葉よりも嬉しく、快感をもたらすものです。仕事にもやる気が出るし、継続のモチベーションになります。


食べ物で脳をチューンナップ


脳によい食材をとり、よくない食材を控える


魚を食べることで「うつ病」になりにくくなる。食べ物や栄養素と脳の関係について、触れておきましょう。

脳によい食材について、巷ではいろいろなことが言われています。ビタミン、ミネラル、脂質、糖質、たんぱく質など、人は多くの栄養を必要とします。この中で、脳機能を向上さる効果があると多くの人が指摘しているのは、「オメガ3脂肪酸(不飽和脂肪酸)」です

このオメガ3脂肪酸とは、ドコカヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)などの特定の構造を持つ脂肪酸の総称で、魚油などに多く含まれます。

アメリカ国立研究所のヒルベン博士は「魚を食べる量が多いとうつ病になりにくい」「魚を食べる量が少ないとうつ病になりやすい」という論文を発表しています。魚をあまり食べないドイツ、カナダではうつ病にかかる率が高い一方で、日本のように日常的に魚を食べる国ではうつ病率はこれらの国々より低いとのこと。

また、DHAには、うつに関する効果以外にも記憶・認知能力の改善効果があるという報告がされており、注目をあつめています。


集中しなきゃではなく、集中できる状態を作る


環境を整えることで集中力は自ずと湧いてくる


集中力とひと口に言っても、個人差が大きいもの。自分は飽きっぽいから集中力なんて身につかない・・・。そんな風に思っている人もいるかもしれません。でも、もしあなたがそう思っていたとしたら、非常にもったいないことです。


本来、脳というものは集中できる環境を作ってやると、勝手にそのことに集中してしまうようにできています

「集中力をつける」ための意味のなさそうな努力を一生懸命するよりも脳が集中しやすい環境作りをするほうが、ずっと簡単で効果的です。

それでは、集中しやすい環境を整えるには、どうすればいいのでしょうか?

人の脳は雑音や騒音があると、そちらに注意が向いてしまい、集中すべきことに集中できなくなってしまいます。音楽やテレビの音、人の話し声なとがそうです。集中している状態が続いている時には、これらの音は気にならなくなります。


聴覚や視覚を刺激するものを遮断することが大事


そこでまず、集中するための一つ目の方法を紹介します。

人間の注意を惹きがちな音楽やテレビなどは消してしまいましょう。できるだけ、注意を向ける音が少ない環境で始めるようにします。耳から入る刺激ばかりではなく、目から入る刺激も気になる人は作業を妨げない程度の薄いサングラスや色付きメガネをかけてみるのも悪くない方法です。


快適にすればするほど集中力は高まる


電話もメールと同じように、集中している状態を邪魔するものの一つです。可能なら留守電かマナーモードに設定しておくのがいいと思います。さらに、仕事や勉強に取り組む上では「快適さ」ということも大切な要素です。

座りにくい椅子、寒すぎたり暑すぎたりする部屋、窮屈な衣服などは長時間の作業には向かないので、出来るだけ排除しておくようにしましょう!

また、一説によれば、勉強や仕事には、柑橘系の香りが良いといわれているようです。集中するための道具として香りを使いたい場合は、自分の一番好きな香りを選ぶのがベストではないでしょうか。


すぐに実現できる目標が怠けグセのある脳を活性化


三日坊主を引き起こす原因を知っておきましょう。

「目標を決めたとしても、いつも三日坊主で終わっちゃうし、どうも続かないんだよね」なんていう人も多いのではないでしょうか。よくあるのが、ダイエット。

目標達成を妨げてしまう気持ちの動きとして、一番のパターンは「一時的な強い気持ちだけが動機になっている場合」です

ダイエットを例にすると、久々に会った友だちや元恋人に「太った?」と言われたことがショックでダイエットを決意するが、普段会わない友だちや元恋人の言うことであることに要注意。今のパートナーが特に何も言わない場合も多いでしょうから、時間がたつにつれて、ショックだった気持ちも薄らいでしまいます。こうして、ダイエットしようという決意を忘れてしまうわけです。

もうひとつのパターンは「途中で遭遇した外的な要因に左右される場合」です

これもダイエットを例にするとダイエット中に誘惑に負けて、付き合いでどうしても仕方なく高カロリーの食事をしてしまうことです。この時点で「もう、どうでもいいや」という気分になり、ダイエットを中止するわけです。


目標が遠すぎると人間はやる気を継続できない


それでは、どうすればこのような失敗パターンを回避できるのでしょうか?

回避する方法として、イメージしやすい身近な目標を代わりに設定してやる必要があります。人間の脳はとてもエネルギーを使うので、すぐに怠けようとします。この時、イメージしにくい目標だと挫折しやすいのです。ダイエットだと「毎日、体重計に乗る」「ちょっとでも体重を減らす」のがイメージしやすい身近な目標になります。

このように目標達成のためには、努力がすぐに結果として見られるように工夫が必要です。結果がどんどん出れば楽しくなって、中毒になるほどハマってしまいます。


覚えたらすぐに寝て、起きたらまた覚えるを繰り返す


一夜漬けは効率の悪い勉強法です

大事なテストの前日はあまり遅くまで勉強せず、しっかり睡眠をとるようにしてしました。テスト前日に徹夜などして、集中的に勉強する人もたくさんいます。このやり方をしている人は圧倒的に多いのかもしれません。一夜漬けはその名のとおり、しっかりと「漬からない」ものです。せっかく徹夜までして頑張るのに、これは脳の仕組みから見るととても残念な勉強法です。


覚えたらすぐに寝たほうが記憶の定着が高まる


アメリカの心理学者の実験で、学習後にすぐに眠った場合と起きていた場合とで、忘却率の比較をしたものがあります。眠ると眠らないとでは大きな違いが出てしまいます。

学習直後に睡眠をとった場合、最初の2時間でほぼ半分忘れますが、それ以降はさらに忘れることはほとんどありません。

一方で睡眠をとらずに起きていた場合は最初の2時間で記憶量は3割程度まで減少し、8時間たつと1割程度まで落ち込んでしまいます。

つまり、覚えた直後に睡眠をとったほうが記憶の保持にはよいということが明らかになっています。睡眠中に忘れにくいというのは、他の情報が脳にあまり入ってこないので、記憶の妨害がされないためであるといわれています。

また、学習をあまり長時間続けると心身ともに疲れてしまい、能率が上がらなくなります。

さらに一気にまとめて反復するより、ある程度の時間をかけて、分散させて反復学習したほうが記憶がより定着しやすいというデータも出ています。(下図のとおり)


勉強中に笑ったり、感動したりすると記憶が定着する


言葉を介した記憶と言葉を介さない記憶があります

人間がずっと覚えている記憶(長期記憶)には、言葉にできる記憶と、そうでない記憶の二つに大まかに分類されます。言葉にできる記憶は「陳述的記憶」といい、言葉にできない記憶は「非陳述的記憶」と呼ばれています。

このうち、陳述的記憶には、「意味記憶」と「エピソード記憶」があります。意味記憶は知識としての記憶のことで、感情の動きは伴いません。言語の意味や情報の記憶がそれにあたります。

エピソード記憶は経験した記憶のこと

情緒を伴うことがあり、思い出もこれに該当します。心に傷を負ってPTSD(心的外傷後ストレス障害;忍耐の限界を超えたストレスを受けた後、その記憶がよみがえって不安を感じる状態)の症状が出るときには、特にこのエピソード記憶が混乱しているのです。

非陳述的記憶は「身体の記憶」とも呼べるもの。

自転車の乗り方、泳ぎ方、お経の唱え方などの「技能記憶」と、人と会ったときのお辞儀や挨拶の言葉かけなどの「連合記憶」があります。これらを総称して「手続き記憶」ということもあります。


記憶するかどうかを判断する「海馬」を味方につけよう


京大卒でお笑い芸人である「宇治原さん」ですが、彼は「暗記は感情を伴う形で覚えるといい」とアドバイスしています

例えば、歴史などを覚えるときは「すごいな~」「怖いな~」「ずるいな~」など感情や感想を口に出して読むと覚えやすくなります。

これは脳の「海馬」という部分が「生存に必要な知識を優先的に記憶する」という機能を持っているからです。

海馬というのは、脳の真ん中あたりにあり、長期記憶を形成するのに非常に重要な部分です。タツノオトシゴのような形をしているので、海馬という名前がつけられました。この海馬で必要な記憶と不必要な記憶を分類して、必要な記憶を残すという「仕分け」を行っているのです。

つまり、仕分け人である海馬に「この記憶は大事だから、ちゃんと記憶しておこう」と判断してもらう必要があります。そのためには、「怖い」とか「興奮した」などの感情を伴う経験が効果的なのです

エピソード記憶は心の動きを伴うので、より記憶されやすく思い出しやすいといえるでしょう

例えば、自分で計画を立てて、旅行した場所のことはよく覚えていますよね。そして、その場所にまつわる歴史的人物や歴史的事件については、授業で習ったときなどにも印象的に感じられたりして、記憶に刻まれすくいと言えます。

また、自分が実際に応援しに行ったスポーツについては、他のスポーツに比べるとルールをより詳しく記憶していることもあるでしょう。

このように感情を伴う体験はより強く記憶されるのです。


皆さんも脳の特性や性質をよく理解した上、快適で効率のよい生活を送っていきましょう。



著書/世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた/中野信子 引用


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